純生CHRONICLE3

リネ2クラシック グランカインに漂う ひとつまみの浮き草たち 【2020年8月31日 完結】

愛しき日々よ

ワタシはグランカインサーバーでグラディエーターをやっておる純生と申す。
便宜上「グラン純生」とでも記しますかね。

おっと、純生・グランディーバじゃないからな、一応。



なぜ自分にわざわざサーバー名をつけるかっつーと、このあと、もう一人、純生が登場するから。


これからヴァラカスサーバーに現存する「純生」にコンタクトするのだ。
ヴァラカスの純生は、まだライブだのクラシックだのなんて括りが無かったころに活動されていた、言わば初代の純生なのだ。

時空とサーバーを超えて対話するのは、ワタシにとっても初めてのことで、一体どんなことになるのか想像もつかぬ。



このようなことになったのは、唐突にその初代から連絡が来たからだ。
何やら話があるらしいのだが・・・



コンタクト場所として指定があったのはここ「話せる島の村」。
この場所で"純生にだけ使える「サモン純生」スキル"を使うことで初代と対話ができるんだそうな。どれどれ…





(ポチッっとな)





ガーガーガー ピーピー




初代「あー!?もしもし?こちら純生ですが?」


グラン「あー、こちら、グランカインの純生です、聞こえてますか、どーぞー?」


初代「ああ、流暢なフィンランド語がよく聞こえておるぞ!」


グラン「こちらこそ、あなたの流麗なスワヒリ語が聞こえてますぞ?」


初代「さすが我が分身。この程度のジョークでは全く動じないな」


グラン「まあ、そうですな。ワタシが分身なのか親類なのかは定かではないですが」


初代「うむ、母親でもハトコでも親戚のおいちゃんでもなんでもよいぞ、好きに選ぶがよい」


グラン「では、無難にイトコということにでも。
あー、ところでーー、こちら『純生CHRONICLE3』というブログに掲載しておる手前、簡単に自己紹介なぞしていただけると助かるのですが」


初代「ふむ。ちなみにワタシも活動していた時代には『純生CHRONICLE』というブログをやっておったのだ。FC2ブログとやらだったかのう」


グラン「探し出すヤツは探し出してしまうので、あまり余計なことは言わない方が…」


初代「そうか?まあ、大したことは書いてないと思うぞ? 中の人は大した発想力も成長もないからな!
ああ、自己紹介だったな。んー、ワタシはルナ出身だ、とかそういうことでいいのか?」


グラン「そうですね、その調子で」


初代「純生と書いて、じゅんなま。ワタシこと純真無垢ことじゅんちゃんは、2006年に当時のルナサーバーで活動を始めたことになっておる。
生来の不器用にシャイが上乗せされて、さらに狩り面倒派だったこともあって、本当に本当に遠回りばかりしておってな。
3年近くもやっていたはずのにいまだLv65なのだ、はっはっは」


グラン「性格の傾向は驚くほどに全く同じですが、ワタシはLv77になりましたよ。はっはっは」


初代「こちらからはそちらが見えているのでよくわかっておるよ。
んで、ワタシの方はかまえるとやらが実装されてしばらく経ったころに中の人の都合で活動を終えておる」


グラン「ああ、ということはあの『覚醒アップデート』とやらは経験していないのですね?」


初代「うむ。わが青春の話せる島をぐちゃぐちゃにしてしまったり、四次職が設定されたりしたアップデートなどは直接は経験していない。
そのあと何回かの時空転送(※サーバー統合等)を経て、いつの間にか、いまはこのヴァラカスサーバーに居る」


グラン「その間は何をなさっていたのですか?」


初代「何をと言われても時間が止まっていたわけなので困るのだが。ただ、我がアカウントが消えずにずっと残っていたというのは嬉しいことだったな。
グランディーバよ、お前とワタシは同じアカウントなのだろう?」


グラン「グランディーバじゃねぇっつーの。
ああ、その通り、我々はオリジナルともいうべきアカウントの所属なのですな」


初代「ふむ。お前がクラシックに生誕したのは、いつぐらいだったか?」


グラン「2018年4月下旬らしい。ちなみにワタシはこのサーバーでは3人目の純生でしてな。前2名はとっかえひっかえ消されていったんだそうな」


初代「ふむ、サブキャラを作ってしばらく使っては稼ぎだけ巻き上げたら作り直してしまう、というヤツだな。
ワタシのときもそうだった。中の人の所業は変わっておらんのう」


グラン「このところは捨てキャラ遊びもしなくなって、ようやく既存キャラのLvを上げる気になったらしいですがね。
それにしても3年近くやってLv65というのはあまりにも…」


初代「あの頃はレイドを公募でやっていたわけではなくてな。血盟やら同盟やらの単位で思いつきでレイドに行くことはあったのだが。
まあ、血盟間の駆け引きというか抗争がしっかりあった時代だったからな、大っぴらにはやれなかったのだろう。
なので、レイドはほとんど経験せず、ほぼ狩りだけで経験値を稼いたもんだ」


グラン「なるほど、そうでしたか。


ところで、先ほど、そちらからはこちらが見えている、とのことでしたが、ワタシからそちらは見えないのですか?」


初代「一時的になら可能だろう。どれ、試しに念じてみよ。ワタシの姿ぐらいは見えるのではないか?」




グラン「ああ、なるほど、見えてきたかも。タヌキ耳ですね、それ?」





初代「どうだ、かわゆいであろう。ネコ耳もウサ耳も持っていたはずだがどこかへいってしまったようだ」


グラン「クラシックにはタヌキもウサギも実装されていないのですよ、うらやましい」


初代「そうかそうか。
そうだ、せっかくだから、お互いの本装備でも見せ合うか。着替えたまえよ、青狼重だったな、確か」











グラン「ほおお、マジェ重だったのですね。当時としてはかなりいい装備だったのではないですか」


初代「ワタシも長きに渡る青重の期間を経て、そしてマジェ重に辿りついている。
アタッカーとしてやるべきことはやっていたということだろうな。

ああ、お前のその青重はまばゆくて美しいな・・・
当時は+6セット効果というのはなかったのでな、その光る青重と比較するとワタシのマジェは劣るのかもしれぬ。」


グラン「でもやっぱり・・・近接職としてはマジェは憧れですよ。特にグラはそれを着てようやく一人前というイメージが」


初代「ワタシの時代は封印解除も大した手間ではなかったし、マジェ自体にはそれほど苦も無く辿りつけたのだよ。
クラシックでは何やら高価なキルトとやらが必要だとかで、大変そうだが」



グラン「ところで、ビューティビューティ。今日の用件はいったい何だったのですか?」


初代「おお、そうだった、パイナップルパイナップルよ。話に盛り上がってしまって用事を忘れるところだった」


グラン「・・・この手のジョーク、我々にしか伝わらないでしょうが大丈夫でしょうかね」


初代「ノリよ、ノリ。有明海苔。
これ以上冗長にすると脱落者が出かねないんで単刀直入にいこう。


今日はな、お別れを告げに来たのだ」



グラン「えっ?」



初代「ワタシはもう消える、ということだ。どうだ、びっくりしたか?」



グラン「そ、そりゃそうですよ。ワタシの祖先であり同一存在でもあろうアナタがいなくなるというのは穏やかじゃない」


初代「驚いて頂いて恐縮至極。思うところはいろいろある。
今のライブサービスではLv100以下は初心者扱いでな、100などあっという間に到達できてしまう。
ワタシはLv65でリタイアしたが、しかしそれは3年近く活動した成果でもある。

ワタシの3年という時間は今の尺度ではゴミと化したのだ」


グラン「・・・・」


初代「それは時代の流れからして仕方がないこと。
ただ、ここからワタシの再始動・再育成というのはもう有り得ない。

このままだとワタシは永遠の65として電子の海を漂うのみとなる」



グラン「し、しかし・・・」



初代「中途半端な姿を晒すぐらいなら、ワタシはもう・・・伝説上の存在でありたい」




グラン「・・・気持ちは分からなくはありません。

で、でも・・・
アナタまで消えてしまうのですか?

やっとこうしてお話ができましたのに。


ワタシの回りからどんどん人が去って行ってしまったというのに、アナタまで去ってしまうというのですか・・・ うう・・・」



初代「泣くな、グラン純生よ。
それはお前だけの悲しみではない。ワタシの悲しみでもある。



・・・だいたいワタシは、お前よりさらに多くの別れを経験してきたのだ。


こうして瞼を閉じれば次々に思い浮かんで止まぬアイツやコイツ。
ワタシがこの大陸を駆け回っていた頃の旧き友たちは、今は誰もいないのだ。



あの頃ワタシが所属していた同盟には80人もの、覚え切れないほどの人数が居た。
みんな、消えてしまった。

血盟も同盟も、みんななくなってしまった。


どこへ行った、お前たち…
ワタシを置いて、どこへ行ってしまったのだ貴様ら。

ワタシを一人ぼっちにして、どこへ行ったんだよ! うう… うううう…」




グラン「・・・」




初代「ルナサーバー消滅の数日前! きっとあいつらは最後にお別れの挨拶をしに来てくれると信じていた!
だからワタシは掲示板や当時のブログの残骸など、ありとあらゆるものを使って連絡を取ろうとした!
ワタシは閉鎖カウントダウンの最後の1秒まで、ずっとアデンで待った!

待ち続けた!!




でも・・・



でも、誰も戻ってきてはくれなかった・・・



楽しかったこともつらかったことも、悲しい別れすらも共にしてきた同士たちは、本当に消え去ってしまったのだ・・・!


どこへ行ってしまったのだ、お前ら。
どこへ消えたのだ、
あの思い出は!!あの日々は!!
うう・・ 
あああああああああああああ!!!






グラン「ぐすっ・・・」







初代「もう・・・ ワタシ一人、ここに居るのはイヤだ。
懐かしい名前を冠しているだけの、あの頃とは似ても似つかぬ話せる島の村に、一人ぼっちで身を置くのはもう耐えられない・・・



ワタシも、もう・・・


 楽になりたい・・ よ・・・






グラン「・・・もはや、かける言葉が見つかりませぬ。 ぐすっ」




初代「グラン純生よ、すまない。これはお前に共有したかったことではなかった。感情が溢れてしまった。謝らなければならない」




グラン「うう・・・ ううう・・・」





初代「グラン純生よ。



お前には感謝しかない。




ワタシの記憶に刻まれた、懐かしい光景を甦らせてくれた。


ワタシの経験を再び辿ってくれた。


ワタシが見たことのないものまで見せてくれた。
バイウムに踏まれる経験までしてきてくれた。



すべてが懐かしく、そして新しい。
素敵なものをワタシに与えてくれた。



そして、見事にワタシを超えてくれた!!






グラン「うう・・・うああああん・・!










初代「・・・感謝もこれで仕納めだ。


さあ! もはや問答を挟む猶予なくワタシは旅立とう!



創造神アインハザードよ、グランカインよ!
そして懐かしき全ての友たちよ!
至弱のグラディエーター・純生の最後の願いを聞き届けたまえ!
この、ささやかなる願いを!!」






ゴゴゴ ゴゴゴゴ







グラン「!?」









初代「我が思い出の染み付きし、この古き衣、
我が後継に融合せしめんことを!
たったそれだけのこと!
聞き届け給え!!
我が命と引き換えに!!!!








ゴゴゴゴゴゴゴゴ





グラン「しょ、初代!?」





ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ






初代「ルナサーバーで生まれしグラディエーター・純生。
これにて消え去ろう!
さらば、愛しき日々よ!!






ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ








グラン「初代!? おい! おーーーい!!!!
はっ、こ、この時空の歪みは!? これは!? おーーい!!」


























初代「さらば・・・ 愛しき妹よ。




さらば・・・ 誇らしき、妹よ・・・・・・・」




































































「純生ーーーーーっ!!!!!」

















(カッ)

























グラン「うああああああああ!!
   目が! 目が開けられぬ!!!




















ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・













ゴゴゴゴ・・・



















































































は!!


こ、これは・・・
これはいったい・・・!? 何が起こった!?



ワタシの青重が・・・?


マジェに!?







・・・光るマジェに変わった・・・だと・・・・・


融合・・・!? そんな!!













純生! 初代純生!! お、おい、初代!!




・・・・はっ




























も、もう・・・
お会い・・・ できないの・・・   ですね・・・


















初代よ。

この奇跡。確かに受け取りましたよ。


安らかに眠ってください。
でも、願わくば、どこかで・・ずっと・・・ ワタシを見守っていてください。



ありがとう、初代。






いや・・・











ありがとう、お姉ちゃん!
















―――純生(ヴァラカスサーバー)2006年6月生誕 2019年12月没






















「愛しき日々よ」


作・執筆・撮影・構成: 純生(こと中の人)
衣裳協力: S様


★この物語は一部フィクションです。
























×

非ログインユーザーとして返信する